Chapter Text
夕食をハッフルパフのテーブルで食べていると、ドタドタと足音が背後からいくつもやってきて思わず振り向く。ジェノ、ロンジュン、ドンヒョクの三人がお揃いの笑顔で立っていた。
「良いこと教えてやるから来いよ!」
まだ食べ終わってもない俺のローブを引っ張るドンヒョク。
「何、三人して?ここで言ってよ」
シェパーズパイをフォークで刺して答えても、それはできないと言うように三人とも首を横に振った。
「ダメ。聞かれちゃダメだから早く食べ終わって」
ジェノにまで言われると気になる。どうせまたドヨン先生とジェヒョン先生の恋愛事情に首突っ込んだレベルの話だとは思うけど。わざわざ食事を抜けて聞くまでの話じゃないしなぁ。
「なんでジェミニヒョンだけ?俺も知りたいんだけど」
一緒に食べていた五年生のチョンロが不満そうに唇を尖らせた。暇だからといって本人のスリザリンのテーブルではなく、ハッフルパフに混じって食べるチョンロは、まさしくこのようなゴシップを求めていたのだろう。
「はは~ん、残念でした!これは監督生だけが聞けるお話なんです~」
ドンヒョクがわざといやらしく言えば、チョンロは余計に気に食わないような声を上げた。
「えーずるいよ、どうせ彼氏には言うくせに」
ドンヒョクとマクヒョンが恋人同士になったのは一ヵ月ほど前だけど、ホグワーツでは噂が回るのは一瞬だ。あのおしゃべりな絵画達のせいかもしれない。今や二人の恋愛関係は全校生徒が知っていることだった。
「は~言わないし!こいつらと違って口軽くないから」
相変わらずデカい声同士で話し合うチョンロとドンヒョクに耳を傾けながらも、俺は自分の目の前の皿を空っぽにすることに集中した。
「心配しなくてもお前も明日には何のことか分かるから」
ロンジュンが優しく言っても、チョンロは不満げにパンプキンスープを飲んでいる。納得はしていないけど、言い返しもしなかった。
俺の目の前の食事が綺麗さっぱりなくなった事に気が付けば、三人に大広間の外の階段の下まで引っ張られた。
「で、三人揃って何をそんなにうずうずしてるの?ついにドヨン先生たちが婚約したとか?」
それくらいしか思いつかない。
「はっ、違うし」
ロンジュンは俺のアイディアを馬鹿にしてるのか、鼻で笑った。
「三大魔法学校対抗試合がここで開かれるんだよ!」
ドンヒョクの興奮した声で俺も思わずポカンとしてしまう。
「え、まじで?」
「明日他の二校の生徒が到着するんだって!」
興奮した仔犬のようなジェノにまた驚く。
三大魔法学校対抗試合はアジアの三大魔法学校のホグワーツ魔術学校、ダームストラング専門学校そしてボーバトン魔法アカデミーの三校の代表の生徒が技と知恵を競い合う魔法試合だ。でもあまりにも危険だからともう百年近くも試合が禁止されていた。
それに生徒の到着の一日前に知らされるなんて。いや、俺たち以外の生徒は何も知らないまま迎えることになるのか。先生たちも何とか言えばいいのに。
「やば、なんで知ってんの?」
「スヨン先生がさっき教えてくれたんだ。監督生八人は色々準備手伝わなきゃいけないらしい」
ドンヒョクに言われれば納得する。
「ダームストラングの生徒はしばらくグリフィンドールとハッフルパフの寮に泊まるらしくて、ボーバトンの生徒はレイブンクローとスリザリンに」
ロンジュンの言葉でふと思い出す。
「ボーバトンって美人が多いことで有名じゃん。お前らズルいじゃん」
レイブンクローとスリザリンのロンジュンとドンヒョクに向かって言えば三人に叩かれた。ロンジュンとジェノはまだしも、ドンヒョクはどさくさに紛れてなんで叩くんだよ。
「お前よくそれ俺たちの前で言えたな」
睨んでくるロンジュンと拗ねたジェノの顔。可愛いな本当に。
「冗談だってぇ」
ロンジュンの腰に腕を回して頬にキスしようとしても突き飛ばされたから、大人しくすることにした。
「で、立候補する?」
ジェノが本題に戻すように尋ねる。
「まって選手って立候補式なの?」
ドンヒョクが聞けば、ロンジュンは呆れた顔でドンヒョクを見つめた。
「炎のゴブレットの中に立候補者は自分の名前を入れて、一番ふさわしい人がゴブレットに選ばれるの。魔法史の授業でやっただろ」
「あ~そうだっけ?魔法史の授業基本寝てるから覚えてないや」
相変わらず魔法史が嫌いなドンヒョク。正直、俺も忘れてたけどそれは三人にわざわざ教える必要ない。
「面白そうだから名前入れてみようよ」
俺の言葉にジェノは直ぐに賛成した。
「選ばれるかはおいといて挑戦する価値はあるよね。賞金もあるはずだし」
賞金と聞けば全員目を輝かした。分かりやすい。でもドンヒョクは直ぐに首を振る。
「やだやだ。死亡事故があったから禁止になってたんでしょ?絶対死にたくないし!マクヒョンと結婚できないじゃん」
「そんな心配しなくてもお前は選ばれないから」
ロンジュンが言えば、ドンヒョクはロンジュンを睨みつけた。
「は?そういうロンジュニは?選ばれる自信があるわけ?」
「...俺は頭脳派だし、名前入れない」
ボソッと呟くロンジュンをジェノは目を細めて見ていた。ジェノはロンジュンが箒での飛行が得意ではない事を誰よりもよく知っているし。きっと俺も同じ顔をしている。
「とにかく、誰が選ばれるか楽しみだね?マクヒョンとかチャンピオンにぴったりじゃん」
ジェノが空気を読んで言えば、ドンヒョクの表情は一変した。
「やば、絶対に出てほしくない」
「どうして?」
「絶対いや」
それだけを言えば、俺たちが引き止める暇も無く顔を蒼白させて行ってしまった。変なの。
自分の彼氏が活躍するのは絶対嬉しいと俺は思う。ジェノやロンジュンが学校中に応援されている姿を見れば誇らしくなるに違いない。それなのに、どうしてドンヒョクはあれほど嫌そうな顔をするのだろうか。ジェノとロンジュンと顔を合わせれば二人は首を傾げる。
「明日は準備で忙しいと思うから早く寝よ?」
ジェノが腕を絡めてくるから、そのまま三人で監督生の風呂場に向かった。
